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著者:須坂蒼
挿絵:杜山まこ
発行:2001年3月
定価:900円(税込)
ISBN:4-89601-522-3 C0293 \857E
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高校生の千里が1人暮らしのため借りた部屋にはすでにデザイナーの透が住んでいた。冷たく傲慢な透と家賃折半で何とか一緒に住むことになったが、父親の失業により仕送りが途絶えてしまう。そんな千里に透は「躰で払えばおいてやる」と無残な一言を告げる。強引な透に逆らえず、気持ちとは裏腹に犯され続ける千里は、躰ばかりが慣らされていく行為に嫌気がさしながらも堪えるしかなかった…。冷たい心と熱い躰、ウラハラな2人の恋の温度は──?
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たどたどしい足取りでエントランスをくぐると、管理人がいぶかしげに千里のほうを見ていたが、その視線を無視してエレベーターに乗った。
『伏見さんはもう家に戻っているのかな…』
やや緊張しながらノブに手をかけると、鍵は掛かっていた。ドアを開けると、中には出た時と同じ静かな闇が広がっている。
『戻ってない…きっと彼女の家だ』
透はどんな風に彼女を抱いているのだろうか…愚かしい疑問が頭をよぎった。透に「愛のあるセックス」をされている彼女のことを思うと電気を流されたようなショックが心臓を走り抜け、張り詰めていた最後の糸がついに、ぷっつり音を立てて切れた気がした。
千里は自分の部屋に戻ると、フランスから持ってきた銀色のスーツケースを開けて、周囲の荷物を詰めこんでいった。勉強道具やノートパソコンや教科書や本…ベッドや椅子など大きなものは、駅前のリサイクルショップに売ってしまおうとも思ったが、面倒くさいのでこのままにしておくことにした。
そうしてある程度詰めこんで、大きな物は隅に寄せると部屋の中がすっきり片付く。千里は部屋を見回すと、安堵にも似た息をついた。
『…もっと早くこうすれば良かったんだ…』
透が帰ってくる前に、家を出ようと思っていた。どこにも行くあてはないし、お金もあまりない。それでもここを離れるつもりだった。
透といるのは辛い。だからといってほかの人間を好きになることもできないのなら、もう透とは離れて、一切かかわりのないところで生活し、彼のことを忘れるようにするしかないだろう。そのほかに、なにもいい方法を考えつくことができない。
しかし千里がリュックを背負い、スーツケースを右手に部屋を出ようとしたまさにその時、玄関のドアが開いて、姿を現したのは透だった。
透もまたスーツケースや重そうな荷物を手にし、顔は出発前よりも疲労でやつれていたせいか、その整った容姿には険しい凄みが加わっていた。透は千里を見ると立ち止まり、確認するように上から下まで顔を動かしながら、スーツケースの存在を認めると驚いたように両目を見開いた。
透がそのように表情を変えるのは非常に珍しい。彼は低い声で呟くように言った。
「なんだ…その格好は」
「僕はここを出ます」
「出る?」
「もうこの生活を終わりにしたいんです…今までありがとうございました」
千里は感情を表さないようになるべく目を合わせず、事務的な口調で答えた。顔を見ればきっとまた迷ってしまう。でも透には彼女がいて、今もそこから帰ってきたところなのだ…。千里は自分に言い聞かせた。
しかしその横をすり抜けようとすると、長い腕がさっと伸びて道をふさがれた。透の口から出たのは千里の全く予期しない言葉だった。
「…浅日か…」
「え?」
「…浅日とうまくデキたから、あいつのところに行くんだろ?」
「ち…ちが…」
浅日のことはもうすっかり頭になかったとはいえ、さっきまで一緒にいたことを思い出して動揺し、口ごもった。それを肯定と受け取ったのか、透は口の端を歪ませて冷たい笑みを浮かべると、刺々しい口調で千里をなじる。
「…自分の言いなりになる男をたらしこむのに成功したら、とっとと荷物をまとめて引き上げか…ずいぶんと商売上手になったもんだな。今度はなにをねだるつもりなんだ…金か? 家か?」
「そんなもの僕は受け取りません! 僕は、もう二度と自分の体を道具にするつもりなんかない…あなたの道具でいるのだって…もうたくさんです…僕は」
傲慢な言い方に千里はカッとなって反論したが、逆に透のほうが千里の肩を乱暴につかみ返してきた。その手には強い力がこもっていて、語気も荒く、いつも冷静な彼のこんな面を見るのは初めてのような気がした。
「じゃあ…あいつのことが本気で好きなのか」
「それは…」
「お前があいつとやるのは許したけれど、お前が出て行くことは許していない。ここに残れ」
「…それは…だめです」
彼女がいながら、道具としての千里も手放したくないという透の自分勝手な態度に、千里は怒りを覚えた。浅日と千里の関係を完全に誤解しているようだったが、もう誤解をといても仕方がないので、千里は透の腕を振り払って出て行こうとした。
「…千里!」
名前を呼ばれて胸の奥がずきりとうずき、立ち止まる。透は感情を抑えた声で静かに言った。
「本当に、行くつもりなのか…」
「…行きます」
「そうか…」
次の瞬間、千里は地面から足がふわりと離れるのを感じた。透の顔が自分の顔のそばまで接近し、体は斜めになって、横抱きに抱き上げられていた。
「お前を絶対に行かせたりしない」
「や…なにするんですか…下ろしてください!」
透は自分のベッドの上に千里を下ろすと、もがく千里を強い力で押さえつけて唇を重ねる。
「んっ…」
それだけで強い痺れが体中を走り抜けた。二週間ぶりの透の唇…柔らかくて弾力があり、舌は少しひんやりとして、絡めさせているうちにもっと深くまで欲しくなってくる。もしなにも考えず、なにも知らずに透と寝ることができれば、きっととても気持ち良くなれただろう。
しかしこの唇はさっきまでほかの女性の上に重ねられ、その舌は彼女の体の上を這っていたのかもしれない…そう考えるともう胸が詰まって苦しくなり、目が覚めたように快楽がかき消えてしまう。
千里は顔をそむけ、透の唇から逃れると呼吸を荒げながら言った。
「やめてください…! 僕はもうあなたの道具じゃないんだ。…だから、こんなことしたら単なる強姦になるんですよ…!」
「強姦か…面白い。それならお前から求めさせてやる。だったら文句はないだろ」
「僕はあなたなんか求めない、絶対に!」
「じゃあこうしよう。お前から求めてきたらお前の負けだ…ここに残れ。最後まで求めなければ…その時は、どこへでも行けよ」
そう言って透は千里をベッドの上へ押さえつけると、覆いかぶさるようにキスをした。舌は喉の奥までなめるほど深く入りこみ、千里は苦しくなって思い切り咳きこむと言った。
「ぼ…僕はそんな話に…乗りませんから…透さんが勝手に…!」
しかし透は千里の話など聞かず、舌は耳の裏をなめながら、ブレザーを脱がすとワイシャツの上から乳首のあるあたりを指先で刺激してきた。
体をかなり力強く押さえこまれ、逃れられなかった。が、千里には透の愛撫に応じない自信があったので無理に抵抗せず、透があきらめるのを待つことにした。
『もう僕は透さんの体では感じられない…すぐに彼女のことが頭に浮かんで…そうしたら気持ちいいのもなにもみんな、吹っ飛んじゃうんだ…』
千里に大した反応がなければ、透も一人相撲を取っていることに気付いてやめるだろう…。
が、ことは千里が考えているようには進まなかった。透の右手はシャツの上から腰をさすり、左手は制服のズボンの上から千里の性器や後ろの穴を細やかな指使いでいじっていた。
しかし、決して直接には触れてこない。全て布一枚越しの愛撫である。
当然刺激は鈍り、見ている千里にとってはもどかしささえ感じられてくる。特に穴への刺激がじれったく、服が邪魔をして指は一定の深さ以上に入ってこられず、千里が感じる部分の手前で止まってしまう。
透の指の動きから生じる視覚の刺激と、実際に体が感じている刺激とのずれに戸惑ってしまう。音もあのくちゅくちゅという卑猥な音の変わりに、衣擦れの音しかしない。
透は顔を首から胸の上へ動かすと、乳首の上をシャツの上から強くなめた。はがゆい刺激が伝わってくる。シャツは唾液で濡れて乳首の薄紅色がうっすらと透けて見える。
この半端な刺激のせいで体は不完全燃焼を起こし、うずくような不快感で満たされていった。いつの間にか、透の罠にはまってしまったのだと気付いた。
シャツの下ではもう乳首がうっすらと尖り、ズボンの中では半ば勃ち上がっていて、あとは直接の刺激を待つだけとなっているのに、相変わらず透はもどかしい愛撫を続ける。それは直接触れて欲しいという欲望を呼び起こす、計算された前戯のように思えた。
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透の口が足の間に移動して、千里の敏感な先端をズボン越しにくわえた時、我慢できずに千里は声に出してしまった。
「…意地悪しないでください…」
「意地悪?」
「…そんな風に焦らして…」
「どうして欲しいんだ?」
千里はためらって、また口をつぐんだ。するとむずむずするような感触がまた足の間を這い上ってくる。勃たせるだけ勃たせておいて、布越しの刺激では決して達することができない、甘美な拷問のようだった。千里は体を震わせながら、小声で呟いた。
「透さん…ちょ…直接…いじって下さい…お願い…」
透は顔を上げ、千里の濡れた瞳を見ながら確かめるように言った。
「俺の勝ちだな…」
千里は欲望に負けてしまった自分の体を悔しく思いながら、一方では早く透になんとかしてもらいたくてたまらずにいた。
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透は千里のシャツをはがし、唇で桜色に染まった右の乳首を挟むと、舌先でその先端をなめた。
「…あぅっ…」
待ち焦がれていた唇と舌がついに肌へ触れ、千里の体は見えない鞭で打たれたように震え、半ば盛り上がっていた乳首はきゅうっと尖っていった。
「…ここにいるって言えよ、千里」
透は千里をうつ伏せにすると膝を立たせ、臀部だけを突き出させる。入り口の部分をよくほぐさず、強引に自分のものを割りこませた。摩擦のせいで鋭い痛みが下半身に走る。
「ぐっ…やあっ…」
しかし同時に、半端に勃起していた千里の部分をその長い指で包み、神経の集まる裏側を中指の関節部分でこりこりといじりながら、ほかの指で袋の部分を柔らかくなぞったので、そこは一気に充血して硬くなり、腰から全身へ蜜のように甘くじわりとした快感がほとばしった。
「…あ…ふぅ」
同じ腰の前から快感が、後ろから苦痛が発して入り混じり、しかし穴が徐々にほぐれていくと、内側から生じる快感が苦痛を飲みこんで一つの大きなうねりを作り、体全体を揺るがせた。千里は体の奥から声を出す。
「…と…透さ…ん…ぁ…」
「ここにいると約束しろ、千里」
透の腰が千里の腰を打ちつける音が、部屋の中に響きわたった。その度に千里の中心も張り詰めていき、千里はかすれそうな声で呟く。
「…ここに、います…」
そう答えた瞬間、頭の中がぐらぐらと揺れて千里はシーツの上に射精していた。挿入された透のものをきゅうっと締めつけ、透は千里の中で果てた。
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