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著者:佐藤ラカン
挿絵:山田ユギ
発行:2001年3月
定価:900円(税込)
ISBN:4-89601-515-0 C0293 \857E
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銀行強盗に遭い人質として連れ去られてしまった美貌の椋太は、生きている実感を与えてくれる犯人・桜井の協力者になることで義兄に復讐を果たそうとしていた。一方、まだ少年といえる桜井は椋太に惹かれ、自分を拒もうとする彼を激情のまま犯してしまう。自分のやった事実に後悔する桜井に、義兄から仕込まれ抱かれると感じてしまう自分の身体を知られたくなかったと告白する椋太。惹かれあう2人に警察と義兄の追っ手がかかる。追われる者、追う者の複雑に絡み合うそれぞれの想い。逃亡の果てにあるものは――。
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「椋太、寝てるのか?」
裕介は隣に転がる寝袋を覗き込んだ。あれから、崖を伝い、川を渡り、道なき道を進んだ。最初、暗くて下のほうまで見えない林のなかを五十mほど滑り降りたときは岩や樹にぶつかって死ぬかと思った。東京にいると明るいのが普通だが、欠けた月明かりでは目の前のものが直前まで見えない。滑り落ちる恐怖に重ねて巨木や岩が肩を掠める戦慄――。それが裕介の神経を強烈に昂揚させた。死の恐怖を前に五感が冴え渡り、危険かそうでないのか瞬時にわかりはじめる。右、左、踏み込め……頭の奥で声が響く。それはまるで自分のなかにべつの人格があるようだ。もしかしたらこれが本能というものだろうか? 仮に、そうだとしたら死なずに済むかもしれない。裕介の胸に淡く希望の火が灯る。そうだ、息を飲み込め、目を開け……一瞬たりとも油断のできない緊張のなかで、椋太と本能を頼りに裕介は危機を乗り越えた。
「桜井か」
目を開けず椋太が訊き返した。
「あ、うん。寝てた?」
「いや、べつに」
寝袋の肩を抜いて椋太は這い出した。伸びをして岩にもたれ、それから裕介に説明をした。
「こういうときでも仮眠をとるのは神経がイカれるからだ。わかるだろう? ギリギリの状態になると無理なことも無理でなくなる。だが、そこで調子に乗ると判断を誤るんだ。人間、それなりに限界はあるから、いまのうちに充分な休息をとっておけ」
「――って、いわれても」
裕介の緊張はすでに股間に集中していた。だからよけい眠れないのだ。
「どうした?」
「な、なんでもない」
「本当に?」
「ん、まあ」
椋太に訊き返されて裕介は目を逸らした。あんなにたくさんしたくせにもう興奮してますなんていえるわけがない。だが、その様子を汲んでか椋太は身体を起こすと裕介の寝袋をこじ開けた。
「口で、いいか」
「えッ!」
ごく狭い岩穴に声が反響する。だが、椋太はそれでも平然としていた。
「いまさら驚くことか? それに、処理できるものは処理したほうがいい」
「で、でも、ンなのヘンだって!」
裕介は慌てて椋太の開いた部分を隠した。
「だ、大体……処理ってなんだよ、処理って。それじゃまるでオレがケダモノみたいじゃないか」
裕介の抵抗に、椋太は驚いて裕介を見返すと視線を下げた。
「ごめん、悪い癖だ」
「クセ?」
「ああ、そういうふうに扱かわれてたから」
椋太はさりげなく過去のことをいう。だが、その冷たい声に裕介は椋太の痛みを感じた。
「椋太」
裕介は身を乗り出して椋太の服を脱がす。そして、現れた椋太の雄の部分を口で愛撫した。
「……あ……」
刺激に声を上げて椋太が腰を引いた。
「桜井、したいなら、オレが――」
「ちがう」
裕介は顔を上げて椋太の顔を睨んだ。
「あんたに、ちがうってわかってほしいんだ」
「え?」
「だって、二人でするときは処理じゃないだろ? いっとくけど、オレはあんたとそういうところでつながりたいんだ」
裕介の主張に椋太が戸惑う。どうやらそれさえ考えるのが恥ずかしいみたいだ。自分からは大胆に誘うわりに相手からの奉仕を受けるのは免疫がない、そういう感じだった。
「それともオレにされるのはイヤなのか?」
「そうじゃないん、だが……」
と、いいながら椋太の手は抵抗をやめない。徐々に、さりげなく裕介を押しのけて優位に立とうとする。細いわりに筋肉のついた身体はかなり手ごわくて、腕をつかんでから抱きよせるまで息もつけなかった。
「…ハァ……」
大きく息を吐いて、裕介は腕のなかの椋太に話しかけた。
「なあ、なんでこんな緊張してるわけ?」
「そ、そいつは気のせいだ」
そういいつつ椋太は身体を反らしたりして裕介の視線を避けようとする、不自然だ。
「嘘つけ。あんた、自分をかばうの下手すぎるよ」
裕介の指摘に、椋太が思わず顔色を変える。
「べつにオレはあんたを責めてるわけじゃないよ。いつまでもオレばっかりしてもらってンのがおかしいっていってるんだ。そりゃ、あんたはオレにされてもあんましよくないかもしンないけど」
「いや、そういうわけじゃなくて……」
椋太は目を伏せて裕介の問いに答えた。
「怖いんだ、と思う……たぶん」
意外な返事に裕介は戸惑う。その反応を見て椋太は続けた。
「上手くいえないが本当にそうなんだ。まだ、オレは思うようにすべてを晒せない。身体が興奮しても感情が昂揚しても、どこかしら冷静でないと不安になるんだ。だから、何もかも受け身なのは困る……」
一瞬、伏せた椋太のまつげが小刻みに震えた。泣いてる? まさか、でも――。
「見るな、バカ」
椋太は指の先で目尻を擦り上げた。
「でも、なんで出るんだ、これ――」
溢れる涙に椋太は首を傾げた。その姿に裕介は憤りを感じて椋太の肩を揺する。
「ン、なの当然だろ、あんたはそんだけ傷ついてたンだから」
「え?」
椋太は顔を上げて裕介に訊き返した。
「わかンない? そりゃ、あんたはとんでもなくキレるし、オレなんかと比べものにならないくらい強いわけだけど……それでも、ひどいことをされたら傷つかないわけないだろ」
裕介はそういって椋太にキスをした。
「でも、オレはそんなヤツとちがうから、身体だけじゃなくて気持ちもほしいんだ。それに、あんたもオレを好きでいてくれるなら、もっといろんなことオレにまかせてくれてもいいんじゃないのか?」
「……あ、うん」
椋太は目を伏せて裕介を受け入れる態度を見せた。裕介は寝袋の上に椋太を倒して口接ける。椋太はもうすでに緊張していて裕介にされるのが苦痛なようだ。だが、裕介は服を脱がせると生身の肌をゆっくり椋太に重ねていく。あの、どこか冷静に人を見ている椋太が目を伏せた分だけ裕介は気が楽だった。
「……や……」
椋太は裕介の与える刺激に身体を竦めた。
「やっぱ、やめよう。なんか、こういうの落ち着かないし」
椋太は顔ごと真横を向いて裕介に中止を訴える。
「それに、したいならオレがするから――」
「だから、そうじゃなくて……Hがうれしくて積極的になるのと早く済ませたくて積極的なのはべつだろ? あんたはそれでも感じてくれてるけど、なんとなくオレのこと拒んでるのもわかるんだ」
裕介は正直に、いままで感じていたことを伝えてみた。愛されてない、なんて思わない。だが、それでも椋太の自分に対する攻撃的な態度に疑問を感じていた。同時に、そうするしかないほど椋太の心にこびりついているものが椋太を苦しめているのもわかる。だから、裕介は少しだけでも椋太を楽にさせたい。ただ、そのためにどうしたらいいのか――。
「桜井」
椋太は下に落ちた自分の服を拾うと裕介に差し出した。
「縛れ」
「……え……」
突然の頼みに裕介は驚いた。なのに、椋太は真剣に裕介を見据える。
「抵抗できないくらい束縛してほしいんだ。そうしたら、オレみたいなヤツでも素直になれるかもしれない」
椋太の姿を想像して裕介は頭が沸騰した。
「あ……あの、それって……」
「おかしいか?」
「いや、そうじゃなくて……ンなことしたらオレかなりヤバくなるかも」
「いいんだ、それでも」
椋太は拳を重ねて両手を差し出した。緩めに縛ると椋太は手首を返して解いた。どうやらこれはかなりきつくしないといけないようだ。裕介は覚悟して椋太の交差した手首を緊縛した。布が多すぎるから手が隠れてしまう。だが、それが裕介をひどく興奮させた。裕介は椋太の手の頭上に固定して腕の内側から脇の下を愛撫する。すると、椋太は内股を震わせて裕介の身体に絡ませた。
「いい?」
「……ああ」
椋太はそうつぶやいて裕介のキスをせがんだ。
「悪いけど、あんたのいう通りにはしない」
裕介は冷たく要求を拒んだ。そうしないと椋太のいいように翻弄されるからだ。
「それに、あんたがどうされたらいいかオレにもわからないわけじゃないんだ」
裕介は膝を立てた椋太の脚の狭間に二本の指で侵入する。椋太のそこは焦がれたように裕介のごつい指をやんわりと適度なくらい締めつけた。男の欲望を満たすのに改造された熱くて果てのない洞窟。その部分は椋太の意思と関係なく裕介の指を愛撫する。このいやらしい身体を封印してしまいたい――本人がそう嫌悪するのも当然なくらい淫乱だった。
裕介は指を曲げて充血した部分に力を込めた。
「……あ……」
椋太が感じて身体を反らす。どうやらこれは演技じゃないようだ。いままでのすべてがそうだとはいわないが、椋太がいろいろと遠慮しているのは裕介もそれなりに察知していたのだ。
その部分を裕介は集中的に中指で刺激した。
「……ャ……」
椋太は感じているのに身体を強ばらせてしまう。自分だけひどく乱れているのが椋太にはとても恥ずかしいようだ。だが、それが裕介を可虐的な気分にする。裕介は指を抜くと椋太の脚を開いて観察した。裕介の愛撫の受けていた椋太の部分は花のように赤い粘膜を露出している。炎症を起こしているのか刺激が欲しいだけなのか、裕介の視線を受けながら椋太の粘膜は蠢いていた。
「椋太の……ってすごくやらしくない? こうして見てるだけでヒクヒク感じてるし」
「桜井、も、やめ……」
裕介の視線を避けようと椋太は抵抗を試みだした。だが、そんなふうにされるとよけい恥ずかしがらせたくなるものだ。裕介は腕に力を込めて椋太の腰を持ち上げた。しなやかな椋太の身体は多少の無理な体位もこなせる。裕介は両足を肩に担ぐと椋太の股間に顔を埋めて粘膜の部分に舌を入れた。
「……ひャ……っ」
驚いた椋太が短い悲鳴を上げた。
「……ャ……ヘンに、な……」
「なれよ、そんなあんたが見たいんだから」
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「ヤ、だ」
「じゃあ、こうしてやる――」
裕介は支えた指で粘膜をこじ開け、その部分を集中的に刺激する。椋太は布の絡んだ手で裕介の頭を押し返した。だが、抵抗がやんだ瞬間、椋太は震えて絶頂を迎えた。白い体液が飛んで裕介の前髪を濡らす。裕介は白い液体を指で拭うと椋太の胸の突起を撫でた。体液で濡れた指先の感触に椋太は震える身体で反応する。裕介は都合の悪い位置にある椋太の腕を持ち上げると刺激に弱い胸の突起に唇を近づけた。
「……ャ……」
吐息が触れるだけで椋太は眸をうるませる。いかされたあとはかなり感じやすいのかもしれない。裕介は舌を出して固く充血した部分を舐める。それから痛いくらいに吸いついて椋太がどんなに暴れようと離さなかった。
「……あ、もう……ッ」
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すでに限界なのか、椋太は身体を反らすと体液で股間を濡らした。椋太はどうやら強引にされるほうが興奮するようだ。たぶん、冷静なうちはどうしても観察してしまうのだろう。それに気づいた裕介は休みも与えず椋太の腰をつき上げた。
「……ゥ……」
椋太の粘膜が包むように裕介の分身を締めつける。裕介はできるだけ堪えながら長いあいだ椋太のなかにいた。もう、このまますべてが蕩けてしまいそうだ。だが、甘い時に終わりをつげるように夜は白み始めていた。
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